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◇少年野球・メンタル◇
「最近の子供はプレッシャーに弱い。メンタルを鍛えなければ」という方々に時々出会いま
すが、プレッシャーとはどんなものなんでしょう。辞書によると『(抜粋)圧力。特に精神
的圧迫』と書かれています。野球の試合でいえば、守備ではピンチの場面、攻撃では得点の
チャンスなどがプレッシャーのかかる場面といえるでしょう。こういった場面でのプレッシ
ャーを克服するためには、本人が練習や心構えなどによって精神的な自信を持ち、状況に動
じないようにすることが必要です。もしくはメンタルトレーニングなどによって平常心を作
り出す訓練をすることもひとつの方法です。人の字を書いて飲み込むような暗示もメンタル
コントロールのひとつです。とにかく大事なのは、平常心を持ち混乱せずに、今ある目前の
問題に対処する方法を考え、実行することだと思います。
プレッシャーから脱する方法としては、例えば選手に声を掛け『君の今の気持ちはわかっ
ている』という理解者になってあげる事や、「この場面では、低めのボールを強く叩くこと
だけに集中しろ」と明確な指示を与えてやることなどが考えられます。ゴルフなら、ミスシ
ョットをしてもボギーなど悪いイメージを考えずに、次はどこにボール打てばよいのか、そ
のためにはどんなスウィングをすればいいのかだけに気持ちを集中させるのと同じです。直
前のミスショットは忘れて、気持ちを次の集中にうまく切り替えるのです。
メンタルは『鍛える』というより『上手にコントロールする』方法を身につけることが、プ
レッシャーに強くなる近道だと思います。どんなに修羅場をくぐり抜けてきたプロゴルファ
ーでさえ、プレッシャーに押しつぶされそうになるのですから。
ところで、プレッシャーと緊張は若干違うように思います。プレッシャーは大体悪い結果
を考えてしまいがちですが、緊張は準備が必要などんな場面でもあることです。極度に緊張
している選手は体が力みがちなので、リラックスさせるために、声かけや笑顔などで安心感
を与えるといいでしょう。人によっては、緊張感で神経がぴりっと引き締まったようにな
り、感覚がとぎすまされるという場合もあります。
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さて自分が危惧するのは、指導者・コーチが選手・子供に与えるプレッシャーの問題で
す。『エラーをするな』『三振はいかんぞ』『四球をだすな』こういったマイナスイメージ
を与える指導は、まさにプレッシャーです。大きな声でのどう喝や怒ることも同じです。選
手はプレッシャーからやってはいけないマイナスイメージを思い描き、消極的になったり混
乱したりして良い結果が出せないケースがあります。中にはそういう指導者からのプレッシ
ャーを応援だと思って上手に自分の力にしてしまう子もいますが、これはメンタルが強いと
言うよりは個性の問題でしょう。とにかく、言葉ひとつで子供たちの心がプラスになったり
マイナスになることを、指導者・コーチは心して欲しいと思います。
そして、試合だけでなく、練習でもプレッシャーがあります。例えば「全員でボール回し
をエラーなしで50球。誰かエラーしたらやり直し」といわれれば、エラーの不安がある子
は、緩いボールを投げたり、捕球も慎重になり動きが固くなります。できるだけみんなに迷
惑を掛けないように、失敗しないよう心がけます。もしそんな状態なら果たして良い練習と
いえるでしょうか。もちろん「エラーなしで続けろ」などの指導で自信をつける子供もいる
でしょうし、決して悪い練習とはいえません。しかしコントロールに自信のない子は、だん
だん肘が下げ気味になり、腕を押しだすように力のないボールを投げることがあります。し
かも肘を下げているので、故障の原因にもなります。守備練習で「どこに投げてるんだ!」
と怒られた子の努力の結果が、自らの体を悪くし、野球の上達を阻害していくのです。これ
は指導者・コーチのプレッシャーこそが原因なのです。プレッシャーに弱い子供が悪いので
しょうか。メンタルが弱いと野球がうまくならないからつぶれてもいいのでしょうか。指導
者・コーチは子供たち一人一人をしっかり見つめ、指導の言葉や練習内容に十分に注意され
ることをお願いします。
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